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性感染症・尿道炎
*性感染症Sexually Transmitted Infection (STI) :
すべての性的行為(性交、オーラルセックスやキスなど)によって感染する病気の総称です。細菌、ウイルス、真菌、寄生虫などの病原体によっておこります。
男性では尿道炎が、女性では子宮頸管炎が最も多い疾患です。咽頭や眼に感染したり、全身性の疾患をおこすことがあります。症状がない場合にも、STIの病原体が分離された場合には、STIに含めることがあります。子宮頸管炎や咽頭の感染症では無症状の場合が多いので、注意が必要です。
この章では、これらのSTIの原因微生物として頻度の高いクラミジアおよび淋菌による男性の尿道炎について主に説明します。

*尿道炎とは:
尿道炎とは尿道からの排膿(分泌物)と尿道痛を主訴とする疾患です。クラミジア性尿道炎(クラミジアが原因)が最も多く、ついで淋菌性尿道炎(淋菌が原因)の順です。クラミジア、淋菌の両方が検出される症例や、いずれも検出されない症例(クラミジアや淋菌以外の微生物が原因)もあります。

*感染経路
オーラルセックスも含むコンドームを使用しない性行為
性風俗女性、一般女性、ホモセクシュアル

クラミジアは自覚症状のない若い女性の5-10%に感染していることがわかってきました。このため、男性の尿道炎の感染源は、性風俗の女性とともに一般女性であることが多いのです。女性のクラミジア感染症(淋菌感染症も同様ですが)は症状が軽く、無症状のことも多い疾患です。子宮頸管炎から子宮内膜炎、付属器炎、骨盤腹膜炎と波及することがあります。さらに卵管閉塞や狭窄を生じ不妊症や子宮外妊娠の原因となることがあります。
淋菌やクラミジアが咽頭に感染しても、一般には無症状です。このため、性風俗女性(一般女性も同じですが)は症状がないまま、咽頭にこれらの病原体を保菌している場合があります。コンドームを使用せずにオーラルセックスを行うと咽頭から尿道に感染する危険性があります。コンドームを使用しない性行為は尿道炎のみならず、梅毒、HIVといったその他のSTIの危険性もあります。

*症状:
淋菌性尿道炎 感染機会から2〜7日の潜伏期間の後、外尿道口より濃厚な膿の分泌、尿道痛、排尿時痛、外尿道口の発赤を認めます。
クラミジア性尿道炎 感染機会から約1〜3週間の潜伏期間の後、尿道痛、排尿時痛、外尿道口からのさらっとした排膿(分泌物)を認めます。一般に淋菌性尿道炎より症状は軽微であることが多く、尿道の不快感、掻痒感、違和感のみの場合もあります。

*診断:
症状、経過を聞き、診察、検尿を行います。
検尿では尿道分泌物または初尿中の多核白血球の増加を認めます。
尿や分泌物の染色検査、細菌検査、核酸増幅検査などより、淋菌、クラミジアの検出を行います。

*治療:
尿道炎の原因菌がクラミジア、淋菌単独なのか、混合感染なのかを診断し適切な抗菌薬を選択する必要があるので、泌尿器科専門医による検査が必要です。昨今、抗菌薬に抵抗性の細菌が増えており、不適切な治療により完治しないばかりか、耐性菌を増加させることになります。

クラミジア尿道炎の場合マクロライド系、テトラサイクリン系、ニューキノロン系の内服抗菌薬を使用します。症状が軽減しても内服を自己判断で中止してはいけません。治療後2〜3週間目に治癒を確認するための検査を行うことが望ましいとされています。

淋菌性尿道炎の場合は、内服抗菌薬が効かない耐性菌が増加しており、注射薬による治療が必要になります。日本性感染症学会によるガイドラインでは、セフトリアキソンの(点滴)静注またはスペクチノマイシン筋注が推奨されています。内服抗菌薬は効果がないことが多いので、注意が必要です。

セックスパートナーの治療も同時に行い、相互感染を防ぐことが重要です。 

*ポイント:
かつてSTIは、歓楽街で遊んだ男性が感染する、不道徳で不潔な感染症と考えられていました。STI予防の対象は主には歓楽街で働く女性とそこに通う男性でした。しかし、最近は、STIは限られた人だけの病気ではなく、普通に性生活を営む一般の人にも広く蔓延しています。もしあなたが一人のパートナーと性交渉を持ったとします。この時点での関係者は、あなたとパートナーのたった2人です。では、そのパートナーもあなたもそれぞれ過去1年で3人ずつのパートナーと性交渉があったとします。こうなると関係者は3×2=6人に増えます。では、これらの3人のパートナーがそれぞれ過去3人ずつのパートナーと性交渉があったとします。3×3×2=18人に関係者が増えます。そうして考えていくと、あなたと目の前にいるパートナーという二人だけの親密なはずの関係の背後には莫大な数の人間関係が存在することになります。この中にSTI感染者が含まれていると、性交渉を介してSTIは急激に増加していくのです。
感染予防には「性行為を行わない」のが一番なのですが、ステディな相手以外との性交渉の際には、いつでも(オーラルセックスのときでも)、正しく(行為の最初から最後まで)、コンドームを使用しましょう。低容量ピルでは妊娠を予防することはできますが、STIを予防することはできません。
また、感染した場合にはきちんと治療を受け、パートナーも一緒に治療しましょう。
2023年7月更新
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