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「前立腺がん」について
はじめに

1.前立腺とは


前立腺は男性の臓器で、膀胱の下で尿道をとり囲むようにしてあります。正常ではクルミ大です。精液の一部の前立腺液を産生し、精子に栄養を与え、精子が動きやすくする働きがあります。前立腺の筋肉が尿道に作用して排尿や射精に関与しています。前立腺は大きく分けると前立腺の内側にある内腺領域、外側の外腺領域に分かれ、前立腺がんは、ほとんどが外腺領域から発生します。
2.前立腺がんの疫学

前立腺がんは高齢者に多いがんであり、特に60歳代後半から罹患率が上昇します。年間罹患数の年次推移では右肩上がりに増加を認め、2017年には男性のがんにおいて胃がんを抜いて第1位になっています。前立腺がん罹患率の増加には、人口の高齢化、PSA(前立腺特異抗原)検診の普及、食生活の欧米化などが要因となっています。年間死亡数においては、罹患数の増加にともない死亡数も増加を認めますが、年齢調整死亡率※では横ばいからやや減少に転じています。 また、本邦では、米国と比較して進行がんが多いといわれています。
がんは高齢になるほど死亡率が高くなるため、高齢者が多い集団は高齢者が少ない集団よりがんの死亡率が高くなります。そのため、人口の年齢構成を考慮して補正した死亡率
3.病因

前立腺がんになりやすい人の原因は、決定的なものはいまだ不明でありますが、血縁に前立腺がん患者がいる場合は、前立腺がんになる可能性が高くなるといわれています。特に血縁者の前立腺がんの発症が若年である場合は、さらに可能性が高くなります。また、前立腺がんは加齢とともに頻度が増加します。死後の解剖によって発見される死因に関係のない前立腺がん(ラテント癌)は、80歳以上で約半数に発見されるといわれています。 その他、欧米国の食生活(高カロリー、高脂肪食)や運動、炎症などが前立腺がんの発症に関連しているとの報告もあります。

4.症状

一般的に前立腺がんは比較的ゆっくり進行し、また、前立腺の外腺領域より発生するため、初期の段階では症状が出現することは少ないです。しかし、進行すると排尿障害、血尿などが出現します。前立腺肥大症でも同様の症状が出現しますので前立腺がんとの鑑別が必要になります。また、前立腺がんは骨に転移をしやすく、骨に転移がある場合は骨痛が出現します。
診断

1. スクリーニング検査


前立腺がんの可能性がある人を見つけるための検査です。
PSA(前立腺特異抗原:prostate specific antigen)検査を行います。PSAは前立腺が産生する特異的なたんぱく質の一種です。採血で測定することが可能であり、かかりつけの開業医や50歳以上の方はお住まいの地域での検診で測定が可能です。PSAは健康な状態でも血液中に存在します。前立腺肥大症や前立腺の炎症、射精などでも高値になる可能性もありますが、一般的にPSA値が4ng/mlを超える場合は、前立腺がんである可能性が高くなるため精密検査が推奨されます。
2. 精密検査

スクリーニング検査でPSAが高値を認めた場合に、泌尿器科専門医のいる病院で行う検査です。PSA値の再確認と肛門から指を入れ前立腺を触診する直腸診や超音波により前立腺の内部の状態・形態を確認します。これらの検査結果を総合し前立腺がんが疑われる場合は、MRI検査を追加して行い、前立腺がんの場所や拡がりを確認する場合もあります。その後、確定診断のため前立腺生検を行います。

3. 確定診断

前立腺がんが疑われたら、確定診断をする目的で前立腺の組織の一部を穿刺針を用いて採取する検査をします。肛門から直腸プローベを挿入し、超音波で前立腺を確認しながら、直腸や会陰部(肛門と陰嚢の間)より穿刺針を前立腺に刺し組織を採取します。その採取した組織を顕微鏡で観察し、がん細胞の有無を確認し、前立腺がんの確定診断をします。主に前立腺の組織を12か所穿刺します。

4. 病期診断

前立腺がんが確定した患者さんに、今後の治療方法を決めるために病気の進行の程度を調べます。前立腺がんの広がり、肺や肝臓や骨などへの転移の有無を確認し、病気の進行の程度を病期分類(TMN分類)で評価します。CT検査、MRI検査、骨シンチグラフィーなどの検査を組み合わせて病期分類を行います。

1) CT検査(コンピューター断層撮影法:computed tomography)
前立腺を詳しくみることには向いていませんが、肺や肝臓やリンパ節などへの転移の有無を確認することができます。
2) MRI検査(磁気共鳴画像:magnetic resonance imaging)
強力な磁気(磁場)を使って行う検査で、前立腺がんの場所やがんの前立腺内部や周囲への拡がりを詳しく見ることが出来ます。前立腺生検後は出血などの影響によりMRI検査の診断能が低下するため、前立腺生検前にMRI検査を行うことが望ましいですが、前立腺生検後にMRI検査を行う場合は、6週間以上間隔をあけることが推奨されています。また、ペースメーカーなど身体に金属を埋め込んでいる方には検査が出来ないことがあります。
全身MRIは、骨転移の検出を目的として特殊な撮影法(DWIBS法)を用いて全身の骨転移の評価を行う検査法ですが、前立腺内のがんの評価や骨転移以外の転移を評価するものではありません。
3) 骨シンチグラフィー
前立腺がんは、骨に転移しやすいがんであり、特に進行した前立腺がんでは骨転移の有無の確認が必要となります。骨転移部位に集まる性質をもつ放射性物質を静脈注射し、しばらく時間をおき、シンチグラフィーで全身の骨を撮影します。がんの転移のある骨の部分が黒く映り、骨転移の有無や転移部位がわかります。
分類

前立腺がんの治療方針を決定するためには、がんの顔つき(悪性度)やがんの進行の程度、転移の有無が重要な情報となります。以下の分類を用いて治療方針を決定します。

1.グリーソン分類

前立腺がんの顔つき(悪性度)は、一様ではありません。生検で採取した組織を顕微鏡で詳細に観察し、がんの顔つきを評価します。正常な前立腺の細胞に近くて進行が遅いもの(低悪性度)から、正常細胞からかけ離れた性質の悪いもの(高悪性度)まで、がん細胞の顔つきを5段階で評価します。また、同じ前立腺の組織内でも様々な顔つきのがんが混在することが多いため、1番目に多くみられる顔つきと2番目に多くみられる顔つきを足して合計の値(グリーソンスコア)で評価します。
2.TNM分類

がんの進行度を判定する基準で、国際対がん連合が採用している病期分類です。がんはどのくらい進行しているのか、転移はしているのか、といった情報に基づき分類を行います。がんの大きさ(T分類)、リンパ節転移の有無(N分類)、遠隔転移の有無(M分類)の3つに分けて分類をおこないます。
治療

前立腺がんの治療法には、様々な方法があります。大きく分けると、監視療法、手術療法、放射線療法、内分泌療法、化学療法などがあります。これらの治療を単独、または併用して治療を行っていきます。患者さんの希望や年齢、前立腺がんの状態を総合的に評価し、主治医と話し合いながら、これらの治療法を決めていきます。また、がんが前立腺内に留まっている場合は、PSAの値、臨床病期(TMN分類)、グリーソン分類を用いて、低リスク、中リスク、高リスクの3つのリスク評価を行い、前立腺がんの治療後の予後を予測し、治療方針の決定の参考にします。
1.監視療法

PSA検査の普及などにより、早期の前立腺がんの発見が増加しています。これらの早期にみつかった前立腺がんの中には、がんの顔つきがおとなしく、すぐに治療を行わなくても寿命に大きな影響を与えない場合があります。一方で内分泌療法、放射線療法、手術療法などの前立腺がんに対する治療は、一定の確率で合併症を引き起こす可能性があり、合併症が生じた場合は、治療を受けた患者さんの生活の質が損なわれてします。そのため、定期的なPSAの測定や前立腺生検を行い、治療が必要と思われるまで厳重に経過をみていきます。

2.手術療法

前立腺がんの根治的な手術としては、前立腺全摘除術が行われます。全身麻酔を行い、お腹を開けて、前立腺と精嚢を取り出します。前立腺を取り出すと、膀胱と尿道の間のおしっこの通り道が、一部なくなってしまうので、前立腺を取り出した後に、膀胱と尿道をつなげます。手術方法は、施設によって異なりますが、開腹手術、内視鏡下ミニマム創手術、腹腔鏡下手術、ロボット支援下手術などがあります。手術時間は約3〜4時間程度で、入院期間は約2週間程度です。一般的には、がんが前立腺内にとどまった患者さんが良い適応になりますが、手術に耐えられる体力を持たない人、10年以上の余命が期待できない人、転移がある人などは適応になりません。手術による主な合併症として、出血、尿失禁、勃起不全などがあります。がんの顔つきが良く、がんの広がりが小さい場合は、前立腺周囲の神経を温存することが可能であり、尿失禁や勃起不全の発症を少なくすることが可能です。特にロボット支援下手術では、腹腔鏡下手術と同等の低侵襲性に加えて、術者が3次元の画像で観察しながら、微細な手術操作が可能であるため、より出血や合併症が少なく、QOL(患者さんの生活の質)が保たれた手術が可能です。

3.放射線療法

前立腺全体に放射線を照射することにより、がんを死滅させる方法です。お腹を切ることなく治療が可能であり、治療中の体への負担は少ないですが、放射線特有の合併症があります。治療中や治療後早い時期に生じる主な合併症は、頻尿、排尿痛、排尿困難、頻回の便意、下痢、血便などです。多くの場合は、数ヶ月〜1年程度で症状は軽快します。治療後しばらくして生じる主な合併症として、直腸出血、血尿、尿道狭窄などがあります。 放射線が照射された部分は、傷の治りが悪くなるため、合併症の治療に難渋することがあります。また、放射線治療後の前立腺がんの手術は、手術による合併症の割合が高くなります。放射線を前立腺に照射する方法として、体の外から放射線を照射する方法(外照射)と前立腺の内側より放射線を照射する方法(組織内照射)があります。前立腺がんが前立腺内に留まった患者さんが適応になります。リスク分類で中リスク、高リスクの患者さんは、ホルモン療法の併用を行います。

1) 外照射(3D-CRT、IMRT)
3D-CRTとは、治療前にCT検査を行い、前立腺を3次元で評価し、前立腺の周囲の臓器への放射線の照射を可能な限り抑えるように放射線の照射範囲を計画し、放射線を前立腺に照射する方法です。さらに照射する放射線に強弱をつけて、前立腺により限局して放射線を照射する方法がIMRTです。IMRTは、実地している施設は限られており、精密な照射のため、治療計画の作成に1週間程度かかります。外照射の治療期間は、照射時間は1回の照射は、約15〜30分程度ですが、5回/週の照射で約1か月半かかります。
2) 粒子線治療(陽子線、重粒子線)
粒子線を前立腺に照射する治療法です。放射線は体の浅い部分ではエネルギーが大きく、体の深い部分に行くほどエネルギーが減衰していきますが、粒子線は体の浅い部分でエネルギーが小さく、さらに体の一定の深さで大きなエネルギーを放出し、それより深い部分にはエネルギーを放出しないという性質を持ちます。これをブラッグピークといいます。この性質を利用した治療が粒子線治療です。つまり、がんの部分にだけ大きなエネルギーを放出し、周囲の臓器にはエネルギーの放出を抑えることが出来ます。また、重粒子線は、細胞を死滅させる作用が粒子線や放射線より強いと言われています。これらの特徴により、前立腺がんに対する高い治療効果(特に高リスクの前立腺がん)や周囲の臓器に対する合併症が少なくなることが期待されますが、実際の粒子線の前立腺がんに対する治療成績が放射線の治療成績を上回るかはまだ明確にはわかっていません。また2018年4月より粒子線治療は保険適応となっておりますが、国内の粒子線治療可能な施設は25か所(そのうち重粒子線治療が可能な施設は7か所)と限られています。

3) 組織内照射
組織内照射とは、前立腺内部に放射性を放出する物質(線源)を一時的または、永久的に挿入し、前立腺内部より放射線を照射する方法です。外照射と比較して、強い放射線を前立腺に照射することが可能であり、前立腺の周囲臓器への放射線による合併症も少ないと言われています。一時的に線源を挿入する高線量率密封小線源療法と永久的に線源を挿入する低線量率密封小線源療法があります。組織内照射では一般的な外照射と比較すると、排尿障害(頻尿など)の合併症が若干多くなります。

4.薬物療法

1)内分泌療法
内分泌療法は、一般的には放射線治療や手術療法が適応にならない転移のある前立腺がんに選択されます。しかし、前立腺内に留まっている前立腺がんでも放射線療法や手術療法に併せて行うことがあり、更には、放射線療法後や手術後の再発時などに使用することがあります。内分泌療法には以下の薬剤があり、主にLHRHアゴニスト・アンタゴニスト製剤と抗アンドロゲン剤を併用した治療が行われます。

a)LHRHアゴニスト・アンタゴニスト製剤(薬物学的去勢)
前立腺がんは、男性ホルモンの影響を受けて増殖します。そのため、この男性ホルモンを抑えることで前立腺がんの増殖を抑えることが出来ます。男性ホルモンは、約95%程度が精巣より分泌され、残りの約5%が副腎より分泌されています。さらに精巣は、脳の一部分である視床下部、下垂体より分泌されるホルモン(LH-RH:性腺刺激ホルモン放出ホルモン、LH:性腺刺激ホルモン)によって、男性ホルモンの分泌を調整しています。精巣からの男性ホルモンを抑制するためには、左右の精巣を摘出する除睾術(外科的去勢)や下垂体に作用して性腺刺激ホルモンの分泌を抑制する薬物療法(薬物的去勢)があります。どちらの治療も治療成績に大きな差はないと言われています。また、薬物療法は、1ヶ月に1回または、3か月に1回の皮下注射で薬剤を投与します。副作用としては、急な発汗やホットフラッシュ(のぼせ)など女性の更年期障害に似た症状や、性機能の低下、体重増加、乳房痛などがみられます。また、長期使用により骨密度の低下が報告されています。

b)抗アンドロゲン療法
精巣からの男性ホルモンの分泌を抑える薬剤以外に、男性ホルモンが前立腺に作用するのをブロックする抗アンドロゲン療法があります。内服の薬剤であり、毎日内服します。抗アンドロゲン療法単独での治療や外科的または薬物的去勢と併せて抗アンドロゲン療法を行う併用療法があります。副作用は、男性ホルモンを抑える治療であるため、薬物的去勢の副作用と同様の副作用や肝障害などがあります。

c)アンドロゲン代謝阻害剤(アビラテロン)、第2世代抗アンドロゲン剤(エンザルタミド、アパルタミド、ダロルタミド)
より強力な内分泌療法として現在、4種類のホルモン剤(アビラテロン、エンザルタミド、アパルタミド、ダロルタミド)が承認されています。アンドロゲン代謝阻害剤であるアビラテロンは、男性ホルモンの生成を強力に抑制し、第2世代抗アンドロゲン剤であるエンザルタミド、アパルタミド、ダロルタミドは、男性ホルモンが前立腺に作用するのを強力にブロックすることにより、前立腺がんの進行を抑えます。4剤とも海外の大規模な臨床試験で、前立腺がんへの効果が証明されています。転移のある前立腺がん、去勢抵抗性前立腺がんが保険適応となっています。
2)化学療法
現在、日本で前立腺がんに承認されている抗がん剤は、ドセタキセルとカバジタキセルの2種類の薬剤があります。どちらの薬剤もタキサン系の抗がん剤に分類され、細胞が分裂する際に必要な細胞構成成分である微小管というたんぱく質が作られる段階を阻害し、がん細胞の増殖を阻止する薬剤です。ドセタキセルは、転移のある前立腺がんと去勢抵抗性前立腺がんに対して使用できます。一方でカバジタキセルは、ドセタキセルの効果がなくなった去勢抵抗性前立腺がんへの効果が証明されている薬剤です。2剤の薬剤とも、一般的な使用方法は、3週間を1つの治療期間(1クール)とし、抗がん剤を点滴で投与します。また、副作用を軽減するためにステロイドも同時に内服開始(連日投与)します。これらの抗がん剤の副作用としては、骨髄抑制、全身倦怠感、食欲不振、末梢神経障害などがあります。
3)トリプレット療法
トリプレット療法とは、@LHRHアゴニスト・アンタゴニスト製剤とA第2世代抗アンドロゲン剤であるダロルタミドと更にBドセタキセルの3つの薬剤を併用した治療法です。転移のある前立腺がんに対して使用可能であり、特に転移の数の多い前立腺がんへの有用性が示唆されています。
5.去勢抵抗性前立腺がん(Castration resistant prostate cancer :CRPC)

前立腺がんは、男性ホルモンに依存して成長をしていきます。そのため、男性ホルモンを抑えるホルモン療法は前立腺がんに非常に有効な治療です。しかし、前立腺がんの中には、ホルモン療法で男性ホルモンを抑えているにもかかわらずPSAが上昇し、がんが成長するものがあります。この様な前立腺がんを去勢抵抗性前立腺がんと呼びます。この様な状態になると一般的に難治性となり、根治は難しくなります。より強力な内分泌療法や化学療法により病勢の進行を抑える治療が主になります。
6.個別化治療(オラパリブ)

がん細胞はさまざまな性質があり、その特徴は人によって異なります。個別化治療とは、がん細胞の性質や特徴をもとに、患者さんごとに適した治療法を選択することです。前立腺がんにおいてはBRCA(ビーアールシーエー)遺伝子を検査することで判断します。BRCA遺伝子に変異が起こっている場合に、オラパリブによる治療を受けられます。
BRCA遺伝子は誰もがもっている遺伝子の1つで、DNAの傷を修復して細胞ががん化することを抑える働きがあります。そのため、この遺伝子に変異が起こるとがんが発生しやすくなると考えられています。オラパリブはBRCA遺伝子に変異があるがん細胞のDNAの修復を阻害することでがん細胞の細胞死を誘導し抗腫瘍効果を発揮します。
BRCA遺伝子の変異を調べるための検査は、手術や診断のときに採取したがん組織を用います。手術あるいは診断時のがん組織を使用できない場合は、再度採取を行う場合や血液を用いて検査を行うことがあります。
※検査によってBRCA遺伝子に変異があることが判明した場合、お子さんやお孫さんに変異が受け継がれる可能性があります。心配な場合や詳しい検査をしたい場合は担当医に遺伝の専門家を紹介してもらい、今後の対応やご家族への伝え方などについて相談できる「遺伝カウンセリング」を受けることができます。
7.その他の治療

1) 骨転移に対する治療
前立腺がんは、骨に転移をしやすいがんの1つです。骨転移そのものが直接生命に危険を及ぼすこと少ないですが、痛み、圧迫骨折や、神経の圧迫によるしびれ、麻痺、骨が破壊されることによる生じる高Ca血症による喉の渇き、悪心、嘔吐などのさまざまな症状が出現することがあります。骨転移の進行を抑える薬剤として、注射薬であるビスホスホネート製剤やデノスマブといった薬剤があります。どちらの薬剤も1ヶ月に1回投与します。どちらの薬剤も注意すべき合併症として、顎の骨が腐ってしまう顎骨壊死があります。また、骨転移による疼痛を抑えるために放射線治療を施行することがあります。放射線治療には外照射治療とラジウム223という注射薬による体内照射があります。ラジウム223は、疼痛を抑えるだけではなく、前立腺がんの生存期間を改善することが報告されています。

2) 女性ホルモン剤
女性ホルモン剤を投与することで視床下部に作用し、男性ホルモンの分泌を抑えたり、男性ホルモンの生成を抑制することで、前立腺がんの増殖を抑制します。
副作用で注意すべきものとして、心不全、血栓塞栓症などの合併症があります。 

3) 副腎皮質ステロイド
副腎より分泌されているホルモンの一種です。強力な炎症を抑える作用や、免疫抑制作用など様々な作用をもちます。明確な作用機序はわかっていませんが、副腎からの男性ホルモンの生成を抑制したり、前立腺がん細胞に直接働きかけることで効果を有していると考えられています。ステロイドの長期投与により、骨粗しょう症、顔がむくみ、高血圧、糖尿病、白内障などの副作用が現れることがあります。
2023年9月更新
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