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腎臓と腎腫瘍
腎臓は肋骨下端の高さで背側にあり、左右両方にソラマメのようなかたちをした10cm程度の長さをもつ臓器です。主な働きは、血液をこして尿をつくることや、血圧のコントロールに関わるホルモンや造血に関するホルモンをつくることです。

腎腎がんには、成人に発生する腎細胞がんと小児に発生するウィルムス腫瘍があり、さらにまれな腫瘍として肉腫があります。腎がんの発生頻度は、人口10万人あたり男性4.9人,女性1.8人と男性に多い傾向にあります。また、腎臓には腎血管筋脂肪腫などの良性の腫瘍が発生することもあります。通常、治療の必要がない場合が多いのですが、腎血管筋脂肪腫は大きさによっては出血する危険があり、治療の対象となることがあります。

腎がんは発生しやすい家系のあることが知られています。例えば、von Hippel-Lindau病といわれる遺伝性の病気では、腎がんの発生する率が高いことがわかっています。また、副腎褐色細胞腫、小脳脊髄の血管芽腫、網膜血管腫などの疾患には腎がんが合併する可能性が高いとわれており、長期透析をしている方に腫瘍の発生が多いことも注目されています。 生活習慣との関係では、たばこ、脂肪摂取量などが危険因子としてあげられています。

症状

腎がんは大きくなるとさまざまな症状がみられますが、最近では超音波検査やCTなどの普及によって小さな腎がんが見つかるようになり、症状のない症例が増加しています。 大きな腎がんでは、血尿、腹部腫瘤、腰背部疼痛などがみられ、全身的症状として発熱、体重減少、貧血などをきたすことがあります。まれに、腎がんが産生する物質によって、赤血球増多症や高血圧、高カルシウム血症などが引きおこされることがあります。
このがんは、もともと静脈内に進展しやすいのですが、静脈内への腫瘍の進展によって、下大静脈という腹部で一番大きな静脈が閉塞すると、血液が他の静脈を通って心臓に戻るため、腹部体表や陰嚢内の静脈が目立つようになることがあります。また、腎がんで発熱や体重減少など全身的な症状を伴っている場合、進行がはやいといわれています。

診断

超音波検査は簡便で非常に診断的価値のある検査です。腎嚢胞(腎臓に水のたまる袋ができたもの)や良性疾患である腎血管筋脂肪腫などの鑑別にも有用です。腎がんの可能性がある場合には、CT検査やMRI検査が施行されます。この検査によって、ほとんどの場合で腎がんの診断が可能であり、静脈内の腫瘍塞栓の有無やリンパ節転移の有無など腫瘍の進展度も診断することができます。また、腎がんが強く疑われる場合には、肺や骨への転移の有無を確認するために、胸部X線写真や肺CT、骨シンチなどを施行します。
腎がんの治療では、原則的に手術を行います。このため手術をする必要のない腫瘍(良性腫瘍など)を調べることが重要です。以下に腎がんと鑑別が必要な疾患を示します。

1)腺腫
定義上は5mm以下の小さな腫瘍で、手術時などの偶然発見されることが多い疾患です。
特に治療は必要としません。

2)オンコサイトーマ
腎腫瘍の3-5%を占めるといわれています。
画像診断で腎がんと区別をすることが難しく、手術後の病理検査(顕微鏡による腫瘍の検査)で診断がつく場合もあります。

2)腎血管筋脂肪腫
腎血管筋脂肪腫は結節性硬化症患者の約70%に起こるといわれ、この場合は両側の腎臓に多発します。小児では時間とともにサイズと数が増大し、大量出血を引き起こし、命にかかわることもあります。また、進行すると腎不全になる場合があります。小さく(通常4cm以下)症状のないものは経過観察でいいのですが、出血や疼痛をきたしたものや出血のリスクの高い7cm以上のものに対しては、手術や血管塞栓術(血管をつめる方法)を考慮する必要もあります。

3)多房性腎嚢胞
通常の嚢胞の場合は治療しないことが多いのですが、内部に壁が存在し、多房性にみえる嚢胞の場合は、腎がんと区別がつきにくい場合があります。

4)リンパ腫
まれに腎臓にできる腫瘍のひとつです。この腫瘍が疑われた場合には生検などで診断し、全身の状態を調べた上で、化学療法(抗がん剤を使った治療)によって治療します。

病期(ステージ)

腎がんの病期は、「腎がん取り扱い規約 2011年4月 第4版」では次のように分類されています。

T-原発腫瘍

 TX   原発腫瘍の評価が不可能
 T0   原発腫瘍を認めない
 T1a  最大径が4cm以下で、腎に限局する腫瘍
 T1b  最大径が4cmを超えるが7cm以下で、腎に限局する腫瘍
 T2a  最大径が7cmを超えるが10cm以下で、腎に限局する腫瘍
 T2a  最大径が10cmを超えて、腎に限局する腫瘍
 T3a  肉眼的に腎静脈やその他区域静脈に進展する腫瘍、
または腎周囲脂肪に進展するがゲロタ筋膜を超えない腫瘍
 T3b  肉眼的に横隔膜下までの下大静脈内に進展する
 T3c  肉眼的に横隔膜上の下大静脈内に進展する、もしくは大静脈壁に浸潤する腫瘍
 T4  ゲロタ筋膜を超えて浸潤する腫瘍

N-所属リンパ節

 NX  所属リンパ節の評価が不可能
 N0  所属リンパ節転移なし
 N1  1個の所属リンパ節転移
 N2  2個以上の所属リンパ節転移

M-遠隔転移

 M0  遠隔転移なし
 M1  遠隔転移あり

治療

腎がんの治療の主体は外科療法です。病期にかかわらず、手術が可能な場合は、腎臓の摘出、あるいは腎臓を部分的に摘出することが最も一般的です。仮に肺や骨に転移があっても、腎臓の外科的摘出が考慮される場合があります。これは、腎臓を摘出した後に転移巣に対して免疫療法や外科療法などを行うことによって、がんの進行が抑えられることがあるためです。また、がんをそのままにしていた場合、将来、出血や腹痛、発熱、貧血などにより生活の質が低下することを配慮して腫瘍の摘出を行うこともあります。もちろん手術適応を含めて、それぞれの症例に応じた適切な治療法を選択することが重要です。
以下に病期ごとの一般的な治療法について示します。

病期I〜II   T1、T2転移なし
根治的腎摘除術あるいは腎部分切除術
病期III   T3a転移なし
根治的腎摘除術
T3b,c転移なし
根治的腎摘除術+下大静脈内腫瘍塞栓摘除術
リンパ節転移あり
根治的腎摘除術(+リンパ節郭清術)
病期IV   T4転移なし
(可能ならば)根治的腎摘除術
他臓器転移あり
上記に加えて臨床的単発の転移であれば転移巣の合併切除
または全身療法(分子標的治療薬、サイトカイン療法、臨床試験)

手術療法

以前より腎がんに対する手術療法として、根治的腎摘除術(腎臓と副腎を摘出する)が行われてきました。近年、各種画像診断の普及から、腫瘍サイズが小さい腎がんが発見される機会が増加しており。このような小さい腎がんに対しては腎臓を全部摘出せず、腫瘍とともに腎臓の一部のみを摘出(腎部分切除)する手術や副腎を残す手術が行われています。このような手術を受けた場合でも再発率、生存率については差がないことが報告され、最近ではさかんに行われるようになっています。また、従来は腹部を大きく切って腎臓を摘出していましたが、現在では腹部の3〜4か所に0.5〜1cm程度の小さな穴をあけて行う腹腔鏡手術が主流になってきました。腹腔鏡下手術の方が、傷が小さく痛みも軽いため、手術後の回復も早くなります。腎部分切除に関しても、一部の施設では腹腔鏡下に行われるようになってきました。さらに平成28年には、前立腺全摘除術に使用されていた“ダビンチシステム”によるロボット支援手術が、腎部分切除術でも保険適応となりました。ロボット支援腎部分切除術は腹腔鏡手術と同様に腹部にあけた小さな穴からカメラとロボットのアーム(手)を挿入し、患者さんから離れた操縦装置でロボットを動かして手術を行います。腫瘍の摘出や切除した部分の処置が腹腔鏡手術より速く確実にできるため、急速に広まりつつあります。小さな腫瘍(4cm以下)で高齢や合併症によって手術が困難な患者さんでは、腫瘍の摘出のかわりにラジオ波による焼灼術や凍結療法によってがん細胞を壊死させる局所療法が行われることもあります。
転移がある患者さんでも、腫瘍の量を少しでも減らした方がその後の治療経過がよくなることもあり、薬物療法に先立って腎摘摘除術が行われる場合や、転移巣の外科的治療が可能な部位であれば、転移巣の摘除や局所療法が行われる場合もあります。

薬物療法

腎がんの転移がある方の場合の治療は、ここ数年で劇的に変化しました。これまでインターフェロンやインターロイキン2などのサイトカインによる免疫療法が一般的に行われてきましたが、平成20年に本邦でも分子標的治療薬という、これまでの抗がん剤とは異なった種類の薬が認可され、腎がんの治療に使用されています。また、平成28年には、免疫の作用を調節してがんをたたく、免疫チェックポイント阻害薬が認可されました。これらの薬剤は、これまでにない副作用が出現することもあり、専門の医師に相談しながら治療をすることが必要です。

治療成績と予後最近

最近、腎がんは非常に小さく早期で発見されるようになり、治療成績は、T1程度のがんでは90%以上治癒しています。しかし、7cm以上の大きな腫瘍や、転移のある腫瘍の成績は劣ります。発熱、著明な体重減少などの症状のあるがんでは、症状のないがんより明らかに予後が不良です。また、腎がんの中には10年以上経って再発する場合もあり、腫瘍が完全に摘出された場合でも、通常のがんに比べて長期間の経過観察が必要です。
 
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